Ⅲ-2.体重減少のケア
ここでいう体重減少とは、骨量や筋肉量が減ってしまう「病的なやせ」のことです。
手術前に比べて3~5kgの体重減少はあったとしても、一日3食+間食をきちんと食べていて、適度に体を動かしていて、体調がいいなら、ひと安心してもいいでしょう。
一度に食べられる量が少ない場合は、同じ量でもエネルギーが高い食品や料理を選びましょう。無理なくエネルギーアップが可能になります。
たとえば、魚は淡泊な白身魚よりも油がのった青魚を選ぶ、肉は脂が多い部位を選ぶ、炭水化物が多い野菜や芋(かぼちゃ・そら豆・じゃが芋・里芋・さつま芋など)を使う、油やバターやマヨネーズを効果的に使った料理にする、などするといいでしょう。
たんぱく質は、それを構成する9種類のアミノ酸のバランスによって「質が高い」「質が低い」と評価されます。
動物性たんぱく質(魚や肉や卵など)のほとんどは質が高く、植物性たんぱく質(大豆や大豆製品や米など)はやや低くなります。植物性たんぱく質は動物性たんぱく質といっしょに食べることで質が高くなります。
胃手術後の人は筋肉を減らしたくないので、なるべく「質の高い」たんぱく質を摂取するといいでしょう。
胃手術後は胃が小さくなった分、食事量は少なくなりがちです。そのため、摂取エネルギー量が減るのもしかたがないことです。
手術後数か月は、体重を増やすことはむずかしいでしょう。「体重が減る」ことよりも、「どういった内容の減少なのか」が重要です。栄養上は問題とならない体重減少もあるので、不安なときは医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
軽い運動や日常の家事などで少しずつ運動量を増やすことで、体のエネルギー必要量も増加します。規則正しい食事と適度な間食を心がけて、必要なエネルギーや栄養素を体にとり込むようにしましょう。
適度な運動は、胃手術後の人にもたいせつなことです。適度に運動して筋肉を減らさない(できれば太らせる)ことが肝要。筋肉はグリコーゲンの貯蔵庫なので、食後の血糖値の急激な上昇を防ぎます。
また運動には、気分転換やストレス解消などの効果もあります。