最新 胃を切った人の後遺症

『最新 胃を切った人の後遺症
―解説と体験者の知恵―』

■監修/青木照明
(アルファ・クラブ理事長)
 編集/吉野肇一
(元国際医療福祉大学教授)
■B6判344頁
■定価1,980円(税込)
■発行/協和企画

胃切除後の様々な後遺症
の平易な解説と、
300名の体験的後遺症対策
のエッセンス

アルファ・クラブ創立30年(平成24年)を記念して発刊した本書は、それまで会報に寄せられた会員皆さまの胃切除後の後遺症に対する工夫・体験の知恵の集大成です。それぞれの後遺症についての平易な医学的解説も、新しい知見を含めて収載しています。胃を切除された方々やご家族に、ぜひお役立ていただきたい書です。

監修者・編集者のことば(一部抜粋)

胃がんは「治る病気」になってきましたが、早期発見での手術や、痛みの少ない低侵襲手術での早期退院が普及する一方、患者さんが自宅でリハビリテーションをしていくうえでの、食べ方や栄養摂取の指導が十分に行えていない構図が浮かび上がっています。後遺症に対するケアは、社会的にも医療的にも、むしろ退歩していることを危惧せざるを得ません。
そこで、本書では、一般の人々が自学自習しやすいように、この30年間にアルファ・クラブ会報に寄せられた会員による「後遺症克服の体験談」約300 編を主軸に編集し、後遺症に関する医学的解説にも頁を割きました。

(監修者 青木照明)


本書の最大のセールスポイントであるきわめて豊富な体験談をぜひとも参考にされ、胃切除後というのは十人十色で、一筋縄ではいかないということを実感していただきたいと思います。体験談の中には、医学的には理解が難しいようなことも往々にありました。効果が逆のお薬の併用などなどです。このようなものも、経験的には許される範囲で載せてあります。

(編集者 吉野肇一)

本書の内容(もくじより)

第1章 胃切除後の後遺症の成り立ち

〈術後、間もなく現れる後遺症〉

  • 食欲不振と後遺症全般
    食欲がなくなる第1の原因は、胃切除による「グレリン」分泌の欠乏
  • やせ(体重減少)
    胃切除による栄養吸収の妨げが原因
  • 早期ダンピング症候群
    食物の急速落下がもたらす食直後の症状
  • 後期ダンピング症候群
     食後2~3時間たって起こる低血糖症状
  • 腸閉塞(イレウス)
     腸の癒着と食物の落下による腸管の通過障害

〈術後、時がたって現れる後遺症〉

  • 胆石症・胆のう炎
    胆のう運動の異常による胆汁うっ滞が原因
  • 貧血(鉄欠乏性貧血、大球性貧血)
    鉄やビタミンB12 の欠乏により起こる
  • 骨障害(骨粗しょう症、骨軟化症)
    カルシウム、ビタミンDの欠乏により起こる
  • 残胃がん
    残胃の粘膜・残胃内の環境が発生の下地に

第2章 胃切除後の後遺症への対策――解説と体験者の知恵

  • 小胃症状
    【症状】腹満感、腹部膨満感・圧迫感、もたれ、つかえ、嘔吐
  • 食欲不振
    【症状】食べても入らない、空腹感がない、食べると気分が悪くなる
  • やせ(体重減少)
    【症状】体力低下、気力低下、食欲不振
  • 嗜好の変化と味覚障害
    【症状】食べ物の好みが変わった、味がわからない
  • 逆流症
    【症状】胸やけ、みぞおちの痛み、胸痛、つかえ、吐き気、嘔吐、食欲不振、誤嚥性肺炎
  • ダンピング症候群
    【症状】冷や汗、どうき、めまい、嘔吐、腹鳴、腹痛、下痢、疲労感、脱力感、失神など
  • 食後高血糖
    【症状】食後尿糖、膵臓の疲弊
  • 腸閉塞(イレウス)
    【症状】腹の張り、腹部膨満(感)、腹痛、吐き気、嘔吐、おならの停止
  • 腹痛
    【症状】腸の癒着、腸内異常発酵、早期ダンピング症候群の腹痛
  • 腹鳴
    【症状】腹がゴロゴロいう
  • 便通異常とおなら
    【症状】下痢、便秘、おなら
  • 貧血
    【症状】どうき、息切れ、疲労・倦怠感、めまい、頭痛、しびれ、舌炎、味覚障害
  • 低血圧、脱力・倦怠感
    【症状】脱力感、倦怠感、頭痛、めまい、立ちくらみ、どうき、息切れ、冷え、不安感、不眠など
  • 手術創の後遺症
    【症状】肥厚性瘢痕、ケロイド、化膿、瘢痕ヘルニア

第3章 胃切除後のリハビリ体験集――解説と体験者の知恵

  • 一般的なこと
    胃切除で生じたマイナスに適応する知恵
  • 食生活と食べ物
    生まれ変わった身体の食生活
  • 運動
    リハビリテーションとしての運動の考え方

索引

ダイジェスト

『最新 胃を切った人の後遺症』の解説編の一部をダイジェストで紹介します。
本書には、会員の方々の後遺症克服体験談もたくさん載っていますので、ぜひ読んでお役立てください。

食欲不振

1999年、胃の内分泌細胞から食欲を司るホルモン「グレリン」が日本人研究者により発見されました。現在、グレリンは食欲を始め、体重増加にかかわる成長ホルモンの分泌、消化吸収、栄養代謝にいたる種々の臓器の働きに影響を与えることがわかっています。胃切除後に食欲がなくなり、体重も減ってしまうことには、このグレリンの欠乏が大きくかかわっています。
胃を切除してグレリンの分泌が減っても、脳を使い食欲が出るように訓練することで食欲を回復させることができます。

やせ(体重減少)

本会会員へのアンケート調査によると、胃切除後5年経過しても、95%の人が術前の体重には戻っていませんでした。体重が減っても、やせ過ぎではなくて体重が安定していれば心配は要りません。しかし、急激に体重が減ってくるような病的なやせには注意が必要です。
太るためには、①食事は少量ずつ回数を多くとる、②よく噛かんでゆっくり食べる、③三大栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質)やビタミン、ミネラルがバランス良く含まれていて腸で吸収されやすい半消化態の栄養補助食品や栄養剤を利用する、④下痢を防ぐ(下痢しやすい食品は注意してとる、消化を助ける消化酵素薬や整腸薬を服用する)、⑤運動をして、吸収された栄養素を筋肉や骨、脂肪細胞に行き渡らせる、ことです。

早期ダンピング症候群

胃切除後に術前と同じように一度にたくさんの食事をとると、それがそのまま腸にダンピング(落下)してしまいます。このことによって生じるさまざまな症状や障害がダンピング症候群です。ダンピング症候群には、食事中・食事直後に起こる「早期ダンピング症候群」と食後2〜3時間たった頃に起こる「後期ダンピング症候群」があります。
早期ダンピング症候群の症状は、①脳貧血や血圧低下による全身症状(冷や汗、どうき、めまい、脱力感、眠気など)②腸の膨満と腸管運動の高ぶりによる腹部症状(腹鳴、腹痛、下痢、吐き気、腹膨満感など)です。また、③後期ダンピング症候群の引き金になる高血糖の状態も起こります。
これらを予防するには、①よく噛んでゆっくり食べる、②1回の食事量を減らして食事回数を増やす、③ごはんなど炭水化物の摂取を控えめにする、④食事中は水分摂取を控えることです。

後期ダンピング症候群

後期ダンピング症候群は、食後2~3時間たってから生じてくる低血糖による諸症状のことです。全身の脱力感、疲労感、眠気、空腹感、手足のしびれなどで、ひどくなると、冷や汗、どうき、めまいが生じ、失神する場合もあります。
胃切除により胃の食物をためる機能が損なわれた状態で、ふつうに食事をとると、適量以上の炭水化物が一度に十二指腸に入り、ブドウ糖に分解されて吸収されます。
これによって血液中のブドウ糖(血糖)が一挙に増えて高血糖になります。すると血糖を処理するインスリンというホルモンが過剰に分泌され、逆に血糖が下がり過ぎてしまい、上記のような症状が現れます。
予防は、①ごはん、パン、うどんなどの炭水化物の摂取を控える、②1回の食事量を減らして食事回数を増やす、③ゆっくりと食べる、④筋肉を鍛えて太らせ、低血糖になりにくい体をつくる、④甘い菓子類などを携帯する(症状が出そうなときにジュースや菓子などで速やかに糖分を補う)ことです。

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