創立40年、改めて「胃無し難病」克服へ

青木照明(アルファ・クラブ代表理事)

AOKI


本会は1981年に、現㈱協和企画の創立者であった、故梅田幸雄氏が自ら体験した胃全摘手術の苦しみから、御子息に背負われて全国の胃切除後の患者さん千人を訪ね歩き、収集した情報をもとに企画設立されました。翌1982年に、胃を切った人の情報誌『ALPHA CLUB』創刊号が「胃を切った人1000人アンケート」を掲げて発刊され、以降《胃を切った人友の会アルファ・クラブ》は胃切除者が自らの努力と工夫で術後障害を克服していくことの支援をモットーに任意団体として、40年間様々な活動を続けてきました。

設立当時、医学界では、良性の胃十二指腸潰瘍と胃がん両者に様々な術方法が用いられていましたが、原則的に、本人にがんの告知は行わず、手術は潰瘍治療として行われていました。胃を一定量残す、良性の潰瘍の手術後の比較的克服しやすい後遺症は、医療提供者側の関心事ではありませんでした。外科学会等での報告でも術後障害の発生率は数%とされていました。梅田氏の調査では80%近い患者が何らかの後遺症を経験しており、医療現場では無視されていたことが判明しました。

その頃、良性の潰瘍には画期的な治療薬の開発で手術適応は急減し、手術は、がん根治術として普及し始めていました。梅田氏の調査結果は術後患者の自覚を促し、医学界には、胃手術法と術後障害に関する研究の進展を求めてきました。そして胃切除術=胃がん手術との認識が急速に広がり、手術後の体の苦しみに、がんとの闘いという精神的苦痛が大きく加わってきました。

本会が発信する情報は「同病相憐れむ」仲間達に貴重な救いとなりましたが、同時に、専門家による胃手術・術後障害の研究が大きく進歩を遂げ、ようやく近年、客観的評価に基づく術後障害の実態と対応法が研究会でまとめられ、本会の情報紙にも紹介されました。胃がん全体の罹患率はピロリ菌除菌の普及とともに僅かながら減少傾向にあり、手術後5年生存率は60%超となり、胃がんは治る病気となりました。しかし、政策としての医療の集中と効率化の結果、早期診断は検診センター方式で機械的に行われ、また、手術は大病院での短期入院で行われるようになりました。術後ケアは再発防止を中心に5年生存を目途に行われており、術後障害を視野に置いたリハビリテーションはおろそかにされがちになっております。

一方、20年ほど前に発見された胃内分泌ホルモン「グレリン」の生理学的機能の詳細解明に伴い、胃切除術後障害の病態が明らかとなり、毎日の「食べ方リハビリテーション(食べ方リハビリ)」には患者自身の努力と工夫に加えて、より積極的な医療介入が求められています。がんは治っても新しい多彩な症状を呈する「胃無し難病」の実態を認識し、克服しなければなりません。

そこで本会も、より組織的・積極的に啓発活動を推進すべく、先般、法人格を取得し組織作りを進めてきましたが、8月から、善意の賛助会員(病医院・個人)と、一公益福祉財団のご支援を頂き、個人会員の諸氏とともに新しい態勢で再出発します。皆様、どうぞご賛同とご協力をお願いします。

(会報「ALPHA CLUB」2021年7月号より)

【プロフィール】
昭和11年、栃木県生まれ。東北大学医学部卒。東京慈恵会医科大学外科学講座主任教授を経て、平成14年より国際協力事業機構健康管理センター・健仁会益子病院・汐留みらいクリニック・日本テレビ通りクリニック顧問医。