前号は、インフォームド・コンセント(説明と同意)の現状について触れました。実に36.7%、3人に1人は「病状や治療に対する説明」が十分に理解できず、半分以下の理解で「納得」してしまったか、「させられて」しまっており、告知と、インフォームド・コンセントの不十分さが浮かび上がりました。

これに対するセカンドオピニオンの利用も、わずか15.7%であり、患者側も「納得のいく医療を受けるため」には、もう少し自分の病気に対して、医療者まかせにせず、情報を集める努力もするべきでしょう。

後遺症の説明が低率

手術前に胃切除後の後遺症について説明を受けた方が、38.6%しかいないとは驚くべきことです(図1)。説明が少しあったという方は39.2%、説明がなかった方は22.3%にも達しております。

図1

胃を切るとどうなるか。胃を切るることは、癌を治すためにはやむを得ない処置ではあるものの、ある意味、新しい疾患概念と病態を生ずる可能性も高率です。術後早期から、それらに対応する心がまえと日常生活(食生活や運動によるリハビリテーション)の注意点を知ることによって予防できる後遺症もあるのですから、十分な「説明」を受け「納得」して手術に臨んでほしいものです。

手術結果も十分理解しよう

図2を見ますと、58%の方が手術結果の説明を理解できたと答えています。しかし、ここでも35.7%の方は少し理解できた、6.3%の方は理解できなかったと答えています。つまり、3人に1人以上、半数近い方は、自分の受けた手術結果を十分に理解できていないことになります。これでは後遺症の起こり方を理解し、予防や対策を講ずるのが難しいのも無理はないでしょう。

図2

胃の手術は、現在では、手術器具も進歩し、手技的にはずいぶんやさしくなっていますが、何しろ、胃は、人間の身体の中で「第二の脳」と呼ばれるほど、いろいろな生理機能を持つ臓器です。さらに、「第一の脳」つまり「精神活動」とも密接な関連を持ち、脳にあるホルモンや細胞間伝達物質はすべて胃腸にも存在していますから、その手術の仕方により、微妙に結果や症状は変わってくる可能性があります。自分の胃の手術結果をしっかり理解することも、後遺症対策の第一歩といえます。

食事・栄養指導も治療の一つ

胃切除後の後遺症は、手術法に大きな影響を受けます。手術法は、胃癌の進行度により決まりますが、胃全摘プラス膵臓部分切除術などが、最も術後の食生活、日常生活の「質」に影響を与えると考えられます。もちろん、その他の手術法でもQOL(生活の質)を大きく落とされている方もいますが、いずれにせよ、術後は、食事のとり方と内容が後遺症に直接影響してきますので、手術直後からの栄養指導は、胃癌の手術後のリハビリテーションには欠かせない「治療」なのです。

今回、その点の調査もしていますが(図3)、全く栄養指導を受けていない方が11.9%もいました。事情はどうあれ、由々しき問題です。なぜならば、手術後の食事・栄養指導なしでは、治療が完結しているとはいえないからです。また、栄養指導が行われていても、指導者が、栄養士(62.4%)、医師(9.7%)、看護師(23.8%%)とまちまちなのは、現在の日本の医療保険制度上、やむを得ないのかも知れませんが、栄養指導は1回で済ませられるものではありませんので、術後3年間程度は継続的に受けられることをお勧めしたいものです。

図3

今回、栄養士の指導は一方通行でなく、98.5%の方に面談で行われていました。そのうち、栄養士の指導が参考になったと答えている方が81.4%と多数を占めたことは、大変喜ばしいことです。しかし他方、参考にならなかったと答えた方が18.6%もいました。この分野の栄養指導の難しさでもありましょう。

最近は、臨床の場に、栄養士が積極的にかかわり、各病気の分野への治療食の栄養指導や、栄養アセスメントを行う、NST(Nutrition Support Team=栄養サポートチーム)体制を持つ病院が増えていることは心強いかぎりです。

看護師は身近な存在

入院中、一番病人のそばにいて、医師・検査技師・栄養士・薬剤師などの医療チームとの間に立つ看護師の役割は、単に医療技術面だけでなく、病気の回復、さらには社会復帰にさえ大きな影響を与えます。

今回、67.7%の方が看護師に満足しており、不満と答えたのは、わずかに2.5%でした(図4)。これは、日本の外科看護教育がまずまずであることを示すものです。しかし、男性と女性で満足度に13%余の差が見られるのはどういうことでしょうか。

図4