前向きな生活スタイルで生涯現役
小病変なのに胃を全摘、音楽で人生を満喫
「余分な脂肪が取れて良かったね
今年、胃がんで胃を全摘してから20年目を迎えることができました。1997年8月、都心にある会社の指定病院で成人病検診を受けた結果、噴門部に「胃体部粘膜不正の疑いあり」との診断、その後、2度の精密検査を経て、11月4日に主治医のS先生から「早期胃がん」との告知を受けました。
「直径1㎝足らずの小病変を成人病検診で発見できたのはラッキーなこと」といわれましたが、「患部が噴門部近辺にあり、部分切除だと胃液の逆流などで弊害が大きいため、全摘出せねばならない」との説明でした。私は「そんな小病変なのに胃を全部摘出? でも、なってしまったものは仕方がないか」と思いながらも、手術への覚悟には遅疑逡巡して時間がかかりました。
11月26日、胃の全摘手術を受け、ルーワイ法で再建しました。手術は3時間余で無事終了、体重は80㎏から65㎏へと一気に減り、S先生から「余分な脂肪が取れて良かったね」と冗談をいわれました。復職までの各1ヵ月ずつの入院、自宅療養は、心身充電の贈り物と前向きに考えました。
12月24日、退院の帰路、家族と昼食し、大好きな鍋焼きうどんを注文。病院から解放された気の緩みで、胃切除患者の鉄則である「よく噛む」という掟を破ったため、うどんが食道の縫合部に詰まり七転八倒、忘れられない思い出となりました。
術後2年ほどは食後1時間くらい気分がすぐれず、つらい思いをしましたが、その後は極端なダンピング症状もなく、少量ずつですが好き嫌いなく食べられるようになりました。
前立腺がんで抗がん剤の併用療法
2005年にS先生から「60代半ばなので、念のため前立腺検査のPSA値を測ってみては」と勧められ、血液検査の結果、36ng/mL(正常値4・0ng/mL以下)という極端な数値が出ました。地元の病院を紹介され、初回の超音波、生体組織などの精査では、がん組織が見つからず、2度目にがんが見つかり、「早期前立腺がん」と診断されました。
CT、MRI、骨シンチなどの検査では全身への転移は認められず、私はQOL(生活の質)を考慮して、手術をせずに、週5日・3ヵ月間の放射線治療と女性ホルモン注射と抗がん剤の併用療法を選択し、現在、正常値を保っています。胃がんと同じく、前立腺がんも早期発見でした。予防医療はとても大切だと再認識した次第です。
都心への通院は時間がかかるので地元の消化器病院を紹介していただいたところ、奇遇にも私の胃を切除したI先生がおられ、16年ぶりの再会でした。以後、現在も3ヵ月に1度通院して採血・採尿検査と整腸薬の処方をしてもらい、2年ごとに内視鏡検査を受けております。
トップレベルの団員!
定年後、行政書士、地域奉仕団体、NPO法人「著作権推進会議」などで現役を続行中です。さまざまな方との交友関係ができたことはとても大きな財産になりました。現在、吹奏楽と男声合唱に取り組んでいます。
吹奏楽については地域奉仕団体「東京八王子プロバスクラブ」の月刊会報紙に投稿した文を転載します。タイトルは『私が…トップ奏者です!?』
私の音楽の原点は「吹奏楽」。1962年、20代に「新交響吹奏楽団」に入団。練習場所は上野の東京文化会館リハーサル室。年2回の定期演奏会出演。会社の吹奏楽団にも所属、「映画と音楽・グリーンコンサート」などの会社イベントで演奏活動。そして転勤や仕事が多忙の理由で1968年に演奏活動を休止した。以来、吹奏楽から遠ざかっていたが定年後に一念発起、40数年ぶりにトロンボーンを手にして、昔取った杵柄で音楽学校に通い、吹奏楽、ジャズのレッスン・コースを受講。慣れたところで2013年、地元の「八王子由井吹奏楽団」に入団、定期演奏会や依頼演奏会に出演している。演奏会で楽団を紹介するに当たり、「高校生から70代の団員がいます」というのが常套句。実はその70代が私。No2はまだ60代前半のメンバー。ご推察の通り、私は演奏レベルの高いトップ奏者ではなく、年齢でトップレベル!?の奏者でした。(以下省略)
音楽で楽しみがいっぱい
男声合唱も趣味です。1989年設立の男声合唱団「コールプレアデス」に参加し、昨年まで団長を務め、現在は若手と交代しました。この合唱団は、八王子市主催の「市民の第九演奏会」に参加した男声メンバーの「もっと歌いたいね」という有志が集まって結成されました。
団名は、当初7名のメンバーでしたので、七つ星で有名な「昴」の学名「プレアデス」を引用しました。29年間(術後20年間)、地元の合唱祭やイベントに出演し、施設の訪問演奏、自主演奏会など現在までに114回のステージを重ねました。来年は30周年記念演奏会が企画されています。
さらに、2006年に東京八王子プロバスクラブの男声合唱団「シニアダンディーズ」に入団、市のイベントや施設などで演奏しています。平均年齢80歳の元気なシニアの仲間と活動しています。歌う楽しみと同時に、練習後の飲み会も大事にしています。音楽談義、メンバーの異業種の話などで盛り上がります。アルコールは、医者からストップがかかっていないことを良いことにして、「お酒は流動食だ!」と勝手に仲間にいってます。
合唱は直立の姿勢で体幹を保つことと、横隔膜の呼吸の訓練で健康維持には優れています。胃を切除した人に、ぜひお勧めしたいです。自分の好きなことを自由にできたことが、健康に幸いしていると思います。
私の音楽活動は、妻の理解と協力あってのことと感謝しています。妻も歳相応の持病を抱えてはいますが、これからもお互いに元気で余生を過ごしてゆきたいと考えています。
私も70歳を過ぎた頃から食後のダンピング症状が顕著になり、声のかすれや倦怠感が伴ってきましたので、老化に合わせた生活スタイルを模索中です。無理せず、天の則に従い「病は気から」だと念ずるこの頃です。
(東京都八王子)