毎日の苦痛が普通の状態で、健康の証拠

手術の年に社長就任

術後17年、今なお続く後遺症の山

平成7年8月、54歳のとき、年に1回を目途に受診していた定期検診の胃カメラで早期胃癌が見つかった。9月に福岡市の九州医療センターで手術をし、術後に医師から、「アナウンサーの逸見さんと同じスキルス胃癌でしたよ。発見が早くて良かったですね」といわれ、喜びと苦しみを同時に経験することとなった。手術は、胃の幽門側を4分の3と胆のう、迷走神経、リンパ節を切除するものだった。

現在勤める会社は、社員50人ほどで、水道用ろ過材を製作している。手術と同年の2月に会社の社長を任された。術後にまず天に祈った。「どうか10年間命をください。10年あれば家族のこと、会社のことを憂いなく、しっかりと築けます」と。それが17年後の今、社長職から相談役に替わったものの、なんとか無事に過ごしている。7年間も余分な人生を授かっているようで感謝している。勤務時間も体調に合わせて自由にさせてもらったことが、これまでやってこれた大きな要因の一つと思う。

術後は、腸閉塞以外の後遺症は程度の差こそあれ、ほとんど経験しており、いまだに続いている。退院後半年は、食後に襲ってくる何ともいえない苦痛に悩まされ、苦しみが治まるまで30分以上はいすの背を倒し、じっとがまんすることが続いた。食事の度に食事に恐怖感を持った。

私の体験的工夫

食事―
退院直後ほどではないが、食後の膨満感は今なお強く続いている。

特に昼食後が一番強く感じる。食べる量は少ないのに腹が張り、腸の中のガスがおならとなって出るまで苦しい思いをしている。

朝食は小さめな椀でご飯1膳、みそ汁1椀、大根おろしとちりめん、または納豆少量が定番。昼食は、秋から春にかけて、柔らかな細麺のうどん、夏はそうめん、ほかにハムや魚を少々。夕食は缶ビールと焼酎1杯、魚介類と野菜類をできるだけ多くとる。

ご飯は3度に1度、少し食べれば良いほうだ。術後、肉類、脂物、パン類、洋菓子は、食べたくても食べられなくなった。血糖値が急に上がり、逆流がひどくなるからだ。

逆流―
術後1年を過ぎた頃よりだんだんと始まり、今では逆流対策が一番の日課となっている。逆流は就寝時に起こるもの、食後に発生するもの、一日中続くもの、突然に起こるもの、とだいたい4つに分類される。

就寝時の逆流防止にリクライニングベッドを購入し、20度くらいの傾斜で頭を高くして寝ている。就寝中に体がずり落ちて水平になり、逆流を感じて目が覚めることは度々である。
また、横向きに寝るのも発生の原因となる。軽い症状の場合には市販薬のパンシロンクールを飲んでいるが、一番利用するのはコカコーラである。アルカリ性胆汁をコーラの炭酸で中和するので効きが早い。冷蔵庫には小缶と瓶入りのコーラが常に入っている。

強い逆流、しつこい逆流には、処方してもらったアルロイドGを飲用している。就寝時の逆流予防にはかなり効果がある。

ガス(おなら)―
食後の膨満感が強いときほどガスがたくさん出て、その後、膨満感も治まる。食事中であろうと所構わず出るので、妻には申し訳ない思いをしているが、知らぬ顔でいてくれるので助かる。困るのはお客との会食や長い会議で、腹が張らないように、食事の量、食べる速度に神経を使う。ガスの臭いは腹の調子が悪いときには強い場合もあるが、それほどでもない。

下痢、便秘―
術後7、8年は下痢で悩まされた。食べるとすぐに便意を催し、特に出張先などの昼食は、近くにトイレを確認してからでないと安心して食事ができなかった。下痢が続くと軽い腹痛や脱力感・疲労感を感じることも多かった。

その後も下痢体質は続いたが、強く意識をしない程度となり、数年が経過した。不思議なことに1年ほど前から、逆に便秘を意識するようになり、便秘薬を時々飲むようになった。便は硬くなく、下痢気味なのに出ないという実に奇妙な現象である。腹圧がなくて腸の排便機能がうまく働いていないのだろうと推測している。胃の手術前は、1日や2日の便秘は気にもならなかったが、胃がない今では、1日排便がないと腹部の張りが気になり、2日目にも排便できないと、食べ物が胸までつかえている感じがして大変になる。

そういう場合には処方された大黄甘草湯を服用するが、この薬が効き過ぎると、また、下痢が激しくなり、5回も6回もトイレに直行することになる。薬の調節にも気を遣っている。
胃の手術で入院中に嫌な思いをしたことがある。下痢が続くので女性の副主治医に相談したら、「便秘は聞いたことがあるが、下痢をすることは聞いたことがない。それはあなたの下痢体質が原因でしょう」と簡単に返答された。しかし、退院後、アルファ・クラブに入会し、会報の記事で多くの人が下痢で悩んでいることを知り、自分だけではなかったのだと妙な安心感を持った。

腹鳴―
グルグルとよく腹が鳴る。多くの場合、腹鳴の後にガスが出るので会談中には困る。

腹痛―
下痢が続いたときに腹痛は起こるが、多くの場合は1時間以内で治まる。治まらないときにはブスコパンを服用している。

やせ―
元来、細身の身体であり、術前は身長174㎝体重54㎏。術後だんだんとやせ、2年後には44㎏となり、その後は1㎏も増えない。腹の皮が背中につく感じを身をもって味わっている。いすに座るも尻の骨が直接当たって、痛く感じる。浴室の鏡で自分の姿を見ると飢餓難民のようで、鏡は見ないようにしている。

体力―
体力は著しく低下した。術前に楽しんでいたゴルフも6年前にやめた。飛距離が落ち、楽しさより、虚むなしさ感じるようになったからだ。今は体力の維持に、70坪程度の家庭菜園をどうにか続けている。最近、身体がきついと思うことが多く、基礎体力の衰えを感じる。

食欲―
術後、食べる楽しみが半減したことが非常に残念だ。術前はおいしい物を求め、食には結構こだわるほうだったが、今は食欲を感じず、肉類、脂物を受け付けず、どんな高価な物を食べても感激しなくなった。3度の食事は、食べなくてはという義務感で摂取しているようなもの。食事量が少ないので、午前と午後に和菓子やバナナなどの間食をとり、栄養ドリンク、ローヤルゼリーを飲んでいる。

アルコール―
食べ物と違い、アルコール類は時間をかければ結構、胃の中に入る。夕食時に250mLの缶ビール1本、湯割り焼酎をコップ1杯飲みながら、できるだけ魚や野菜類をとる。寝酒として赤ワインを愛用し、1本のボトルを3日で空ける。飲み過ぎと妻から注意されるが、肝機能の数値は悪くないので、飲み過ぎとは思いながらもついついと。

血糖値―
食後2時間くらいして、家庭菜園などで身体を動かしていると、低血糖で気分が悪くなることがたまにある。甘い物をとり、しばらく休んでいると落ち着いてくる。

健康のありがたさに感謝

日、どこかに苦痛を感じたりしながら生活を続けているが、これが私の普通の状態であり、むしろ、この状態が健康である証拠だと思っている。特に健康を意識することもない、健康を当たり前に思う人は、健康のありがたさに気づくこともなく、自然に生活をしている。

私には2度とそういう状態は訪れることもないだろう。しかし、私はそれを決して悔んではいない。今日あることを感謝し、今からの一日一日を大切に過ごしていく決意である。