昔91㎏の肥満体、腹腔鏡で胃を全摘

44年前に仕立てた式服が着られるようになった

不規則だった食生活

昔91㎏の肥満体、腹腔鏡で胃を全摘

5年半前の平成21年の10月と11月の2ヵ月間の行動を、手帳を見ながら振り返ってみました。私はエネルギー関連の会社で、需要開発の仕事を長らく担当していました。仕事柄、食生活が不規則で、夕食をきちんと家でとったのは、休日を含めて60%くらい。40%はアルコール付きの外食でした。

若い頃は暴飲暴食を地で行っていました。少なからず胃袋に過大な負担をかける生活を30年以上続けていたことになります。定期的に受診する人間ドックでは「慢性胃炎」という診断がずっと続いていました。

還暦を過ぎて、そろそろ長年お世話になった胃袋を労わろうと平成20年暮れ、埼玉県の坂戸中央病院の人間ドックで初めて胃カメラ検査を受けました。そのときは何ともなかったのですが、翌年の12月17日の胃カメラ検査は、1年前とは様子が違い、担当の永尾先生は何もしゃべらずに黙々とカルテに書き込みをされるばかりでしたので、私は少し不安になりました。

年が明けて1月5日に土屋院長立ち会いの下、胃カメラによる再検査が永尾先生により行われました。1月20日の総合所見は、「胃の上部(食道に近い部分)に2㎝程度の腫瘍ができているが周辺には転移していないようだ。早期胃癌の疑いがあり、至急外科を受診してください」というものでした。さらに、関根名誉院長からは、「おめでとう。この時期に癌を発見できて本当に良かったね。手術で100%完治するから」と励まされました。

〝お父さんは危機を乗り切る〞

翌日、知り合いが勤務していた東京のがん研究会有明病院の外来診療を予約し、28日午前に山口副院長、午後に消化器内科の藤崎先生の診察を受けました。2月3日の超音波検査の結果を踏まえた藤崎先生のコメントは、「早期癌であるが、超音波による断層写真を見ると癌細胞のほとんどが粘膜内にとどまっているものの一部が粘膜下層(胃壁の構造―粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜)という部位に病変が広がっている。リンパ節に転移している可能性が15〜18%ある。そのため内視鏡による処置では、将来、胃癌が再発する可能性があるので、最新の腹腔鏡で胃の手術をするほうが良いでしょう」とのことでした。

息子に送ったメール

「お父さんは、先週まで元気に会社に行き、休日はスポーツセンターのコナミにと普段どおりの生活でしたが、今週からは胃癌の手術を前提にした生活に変えることになります。去年の暮れからお酒を止めているので、その分だけ食事の量が少なくなり体重が減っています。癌になったのは仕方がありませんが、早期癌で手術により完治することがはっきりしているので、できるだけ心を落ち着かせてこの危機を乗り切ろうと思っています」

おなかの脂肪が多く難しい手術

2月8日に消化器外科の比企先生の診察があり、手術が3月23日に決まりました。執刀医の比企先生は、たいへんな売れっ子で、かなり先までスケジュールが埋まっていそうでした。
「富樫さんのおなか周りの脂肪は人並み以上に多く難しい手術になりますが、私は完璧にやる自信がありますので安心してください」と念押しされました。因みに私の身長は166㎝で、術前の体重はなんと91㎏でした。

友人に送ったメール

「人間ドックでの胃カメラで、早期癌の段階で発見してもらえて、幸いでした。この機会を利用してメタボリック症候群におさらばして、少しでも長生きしようと思っています」

3月3日になって、病院から「空きベッドが出たので、手術日を2週間繰り上げできますが、都合がつきますか」との電話があったので、「YES」と返事をして急遽3月7日午前中に入院し、9日に手術をすることになりました。手術は、10時過ぎから始まり、14時過ぎに終わりました。所要時間は253分、出血量は30㏄とのことでした。

術後、比企先生は「癌の発生部位が食道に近いため胃を残しても餃子くらいしか残らない。手術の精度を高めるため胃を全摘しました」と話してくれました。手術を終えた2日後の11日から、点滴をしたまま、病院内の廊下を歩く訓練を始めることになりました。もう少し、ベッドで横になっていたいという気持ちを振り払って、我慢をしながら廊下を歩き回っているうちに、体の調子がだんだん良くなってくることが実感できました。

友人に送ったメール

「術後の経過が思いのほか順調に推移し、連休明けの3月23日に退院しました。17日ぶりにわが家で晩ごはんを食べることができました。消化の良い物を少しずつ口に運ぶという慣れない所業に挑戦しています。来週の月曜日から会社に復活します」

第1回の定期検診は4月12日。
比企先生は「血液検査の結果を見ても順調に回復している。ぎりぎりのところで転移もなかった。ステージⅠで、ここまで来たら、腸閉塞などの合併症が起きる心配もない。便秘気味とのことなので漢方系の整腸剤も入れて処方しましょう」とのこと。

6月3日の2回目の定期検診では「血液検査の結果でも順調に回復しているし、手術の傷跡もほとんど目立たない。皮下脂肪もだいぶ減ってきて、トータルとして手術は大成功。食事のときに詰まることがたまにあるとのことなので内視鏡で検査をし、必要であれば狭窄部分を拡げる治療を段取りします」と比企先生から話がありました。当日の午後にはバルーン拡張術を実施してもらい、食事時の詰まりとは無縁になりました。

その後、9月と3月に術後観察を兼ねた半年ごとの定期検診があり、平成27年3月5日の定期検診で無事卒業となりました。

友人に送る下書きのメール

「胃の手術後、一時は、体重が62㎏まで落ちましたが、最近は68㎏前後をウロウロしています。
44年前、社会人になったばかりの頃の水準です。当時、仕立てた式服が着られるようになりました。月曜から木曜まで、毎朝5時45分に起床し、8時に会社に着いています」

休日は、パソコン、料理、スポーツの教室で家にいることは稀です。「亭主、元気で留守が良い」を実践しています。少しでも今のスタイルを続けたいと思っています。