1第1章 ダンピング症候群・食後の苦しみ〈ダンピング症候群〉

マナーにしばられず少量多頻度の食事を徹底

SS(62歳・男性、会社員)

【住所】東京都調布市
【病名】胃潰瘍(胃2/3切除)
【体重】術前67kg・術後55kg

◇仕事中も堂々と口の中をモグモグ

術後約6カ月で復職、医者からは「特別に順調」と言われているのですが、ダンピング症候群はかなり厳しい。
脱力感があり、すぐに着替えがしたくなるほどの全身からの冷や汗があり、しばしば低血糖症にもなりますので、通勤は、混んだ電車には絶対に乗りません。仕事はかなり多忙なのですが、会社にはわがままを認めてもらっています。ありがたいことです。食事は「少量多頻度」が原則なのは言うまでもありません。したがって会社では、昼休み以外でも、意地汚いほど多頻度的摂取であって、食べた途端に上司に呼ばれ、慌てて口の中をモグモグさせながら駆けつけるといったこともしばしば。
術前はカバンを持ったことがなかったのですが、今は、弁当・飴玉・非常食などなど、数種類の食物を入れての通勤。チーズなどは、たいへん効果的な食べ物ですね。

◇半年にわたるメニューメモで徹底研究

ワンホールごとにサンドイッチを
ワンホールごとにサンドイッチを

先に述べたように、医者からは「特別に順調」と評価されてはいるものの、私なりの努力はしてきたつもりです。
例えば、術後6ヵ月間は、家内の協力も得て、食事ごとに細かいメニューを記録し、どんな食物が良いか悪いかを体験的に研究し、自分の体に合う食物の選択に努めてきました。また食事量も、小鳥が餌をついばむような少量多頻度で、トータルすれば胃のある人とほとんど同量を食べています。再開したゴルフでも、ワンホールごとにサンドイッチを食べている次第。あまりマナーのいいゴルフではないのですけれども、マナーより体が大切と、同僚に認めてもらっています。
とにかく、食べれば多かれ少なかれ何らかのショックに襲われるのがダンピング症候群であって、極言すれば一人ひとりその症状は違うのですから、食べ方も一人ひとりが工夫してゆかねばなりません。
手術後50kgだった体重が今は55kgになったのも、食べ方の工夫と運動を続けているからだと思います。胃のない人は、自分に合った食べ方が一番の健康法ですね。

(取材・丸木)

〔青木先生の一言〕

青木先生

まさに胃手術後の食事療法についての優等生ですね。ダンピング症候群克服の極意にとどまらず、体重や栄養状態の管理にも応用できる原則は、少量多頻度の食事です。もう一歩進めてビタミンB12を薬剤として、またカルシウム(乳製品)、鉄分を多く含む食事(レバーなど)を意識的に補い、コンスタントに消化酵素薬を補っていくと、長期遠隔時の障害予防にもよいでしょう。