最初の病院で「進行胃がん」と…

術前化学療法を受けてから手術、今は趣味悠々

転移していれば「余命1年」

最初の病院で「進行胃がん」と…

私は2010年の62歳まで滋賀県で看護師として働いていました。現在は、社会で役立つようなカウンセラーを目指して、日夜、勉強しています。

2011年7月、食事の通りがスムーズでなく、違和感があったので自宅近くの病院を受診したところ、胃がんと宣告されました。

「進行しているから、ただちに胃を切りましょう。検査して多臓器への転移があれば、胃は切りませんが余命1年です。この病院に入院するか、他の病院に入院するかは3日間のうちに決めてください」と医師からいわれたときは、がんとは全く想像もしていなかったのでショックでした。一病院の診断だけでは気持ちの整理がつかず、3日後には紹介状を持って東京の聖路加国際病院を受診しました。

検査結果の報告を聞くときは、医師から「余命1年」と宣告されることも覚悟して臨みましたが「転移がないから、胃を切りましょう」といわれたときは、内心ホッとしました。手術をする前に、がんの炎症を抑えておいたほうが、手術もしやすく、術後の経過も良いということで、抗がん剤ティーエスワンを飲用し、入院してシスプラチンの点滴投与も受けました。

さすがに倦怠感は強く、医師から「しんどそうだから抗がん剤治療は中断して、すぐに胃を切りましょうか」といわれましたが、頑張って予定通り術前化学療法を2コース終えました。

退院後の抗がん剤は拒否

10月5日に、胃の全摘手術。ルーワイ法で再建しました(ステージⅢA)。食道の一部も切除したということでした。医師から「退院後、抗がん剤を飲用すると再発の確率が減りますが、どうしますか」と問われ、これ以上、しんどい状態は続けたくないという思いから、飲まないことを選択しました。

術後、約4年を経過した現在、再発はしていません。27日間の入院を終え、退院して自宅へ帰る途中、地下鉄の階段をスムーズに登れず、「駅員さんを呼びましょうか」と声をかけられたときは、この先どうなるのかと不安がいっぱいになりました。現在は、体力もほぼ普通に戻り、食事もおいしく、何でも食べられるようになりました。「今あるのは、神の恵み」と感謝あるのみです。胃を切った直後は、ここまで回復するとは全く予想もしていなかったので、体の回復力には驚いています。胃が年々、少しずつできてきているような感じです。

順調に回復してきた歩みを振り返ると、食事はよく噛んで、ゆっくり時間をかけて食べることを第一に心がけました。1回の食事量は少なくし、1日6回以上に分け、食べたあとは体全体がけだるくなりましたが、力を得るために頑張って食べました。それでもエネルギー不足になるので、テルミール、カロリーメイトなどの栄養補助食品で補いました。硬い物は避け、軟らかい食品を選び、お粥から始めました。

その結果、幸いにも、今日に至るまで、つかえ、嘔吐などの後遺症はありませんでした。工夫して頑張ったかいがあって、入院中43㎏まで落ちた体重が、今は59㎏で安定しています。

下痢と食欲不振のときは、すぐ近くのかかりつけの医師を受診し、点滴とエンシュア・リキッドを処方してもらって、体力の維持を図りました。その頻度は年月とともに減り、この1年、下痢も食欲不振も全くありません。

あめとビスケットは必携

最も悩まされた後遺症は、ダンピング症候群です。前ぶれもなく、突如起こります。倦怠感、脱力感に襲われて、自分の体の自由が利かなくなります。アメをなめたり、りんごジュースを飲むと、しばらくして治まります。入浴中に起きたときは裸のまま、浴室から飛び出し、慌ててそれらをとりました。

スーパーで買い物中に起きたときはカゴを店に戻し、急いで車に戻り、アメを食べたり、ジュースを飲みました。現在もアメとビスケットは必ず持ち歩き、手放せません。

趣味のスポーツを楽しむ

順調に回復していたのですが、手術後、1年半ほどたった2013年2月、旅先で腹痛に見舞われ、地元の病院へかけつけて点滴を受けました。雪の積もった厳冬の2月に山形県の米沢まで行き、しかも術後初めて駅弁を食べたのが影響したのでは…。さらに寒さと疲労が原因かと思います。無理は禁物です。

2013年4月からはジムへ通い、筋力づくりとランニングを始めました。すぐ息切れしていたのが、今は楽しく汗をかいています。ヨガ、エアロビクスのステップも楽しんでできるようになりました。今は普通の体力に戻りましたが、さらにアップを目指しています。水泳は元々好きで、1時間以上かけて何回も休みながら、ついに1500mの目標を達成しました。趣味の合唱も楽しんでいます。

虫垂炎を発症

エピソードがあります。昨年9月、じっとして寝ていることもできないほどの腹痛に襲われ、術後の後遺症かと思い近くの病院を受診したところ、虫垂炎ということで、そのまま入院となりました。5日間入院し、抗生剤の投与で炎症は治まり、後日、手術するということで退院しました。

虫垂は今年の3月、再発する前にということで、体調が良好状態のときに切除しました。「胃の手術創があるから、傷が小さく回復が早い腹腔鏡手術はできない」と医師から告げられていましたが、術後は、「腹腔鏡手術をしました」と話されました。胃切除に比べ、比較にならないほど簡単な手術でしたから、手術後3日目に一人で車を運転して自宅に帰りました。

ちなみにこの医師は「聖路加国際病院の胃切除の手術は、癒着も全くなく、すばらしいものだった」とおっしゃっていました。どちらの手術も全く合併症を起こすことなく、順調に経過できたことを感謝しています。

現在、胃切除後の後遺症に悩んだり、食事が進まないことにいらだちを感じておられる皆さん、日々、ゆっくりですが確実に回復してゆきます。小さな浮き沈みはありますが、体調は必ず回復します。希望を持って生活してください。