田辺 功 医療ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員

青森県では胃がん40%見逃し

医療の周辺_eyecatch_201710

私は3年半前、職場検診で胃がんが見つかり、手術を受けました。アルファ・クラブの会員の方の何割かは、職場や自治体、あるいは人間ドックなどでのがん検診で見つかったと思います。公費負担の自治体検診は、胃だけでなく、大腸、肺、乳、子宮のがんが対象です。

その自治体検診ではがんの見逃しが予想外に多いとの青森県の調査結果が、6月下旬、NHKのテレビで大きく報じられ、県民に大きな衝撃を与えました。

がん死亡率が12年連続で全国ワースト1位の同県は2011(平成23)年度に自治体検診を受けた10町村の住民2万5千人を調べました。検診で「異常なし」と判定されたのに、1年以内にがんと診断された場合は見逃しの確率が高いと考えられます。

その率は、バリウムによるX線胃がん検査で40.0%、大腸がんの便潜血検査で42.9%、子宮頸がんの細胞検査28.6%、肺がん16.7%、乳ガン14.3%でした。精度の高い検査は時間やコストがかかり、実施人数も制限され、しかも健康被害を招く可能性もあります。このため簡便法が採用され、20%程度の見逃しは許容範囲内と考えられています。

しかし胃がん、大腸がんの4割台は専門家も驚いたようです。

胃がんはバリウムより内視鏡

がん検診が有効かどうかは、実は何度も問題になっています。検診直後にがんと診断された患者の訴訟がしばしば起き、さらには近藤誠医師著の『患者よ、がんと闘うな』(1996年)では「がん検診は百害あって一利なし」とまで書かれました。

がん専門医らで構成する厚生省(当時)の「がん検診の有効性評価に関する研究班」は1998年、論文などの分析から「乳がん、肺がん、子宮体がん検診は有効性が証明されていないか小さい」と報告しています。

2005年に私も『朝日新聞』で、福岡県対がん協会が調査したところ、胃がん検診でのがん発見率は自治体で4倍も違っていたとの記事を書いています。請け負った10検診機関のX線装置、精密検診の受診率の差でした。経費節約のため自治体がより安い検査機関に依託先を変えるのが流行っていました。

胃がんはバリウムより内視鏡検査が確実で、目的を考えれば自治体は値段ではなく精度の高いがん検診を目指すべきでしょう。