田辺 功 医療ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員

日本版ラスべガスの皮算用

医療の周辺_eyecatch201709

日本でも賭博場・カジノを認める、いわゆるカジノ法が、賛否両論の末、昨年12月に国会で成立しました。カジノの解禁には日本維新の会や安倍首相が熱心で、経済政策アベノミクスの柱のような扱われ方でした。しかし、一般国民の関心からは遠い感じで、私もあまり実感がありませんでした。

カジノ法の正式名「IR推進法」も、わざとわかりにくくなっている感じです。IRとは「統合型リゾート」で、カジノを中心にホテルや会議場、展示場などを併設した長期滞在可能な地域のこと。金持ちの外国人を集めて散財させる米国のラスベガスのような場所をいうようです。

目的は経済活性化です。誘致に熱心な大阪市や横浜市は年間7千億円前後の効果を見込んでいますが、「取らぬ狸の皮算用」になる可能性もあります。直接のターゲットは中国人富裕層ですが、これも爆買いに陰りが出ています。マカオ、シンガポールのカジノも低迷しています。中国政府の引き締め策、消費の一巡、アジア地域の最後発IR、といった条件も加わります。これに対し、きめ細かいサービスが得意な日本人だけに心配ないとの楽観論もあります。

「依存症」を韓国から学ぶ

反対論の最大の理由はいまでも500万人といわれるパチンコ、競馬などのギャンブル依存症を増やすのではないかとの懸念です。有識者による「IR推進会議」が対応策を議論しました。20歳未満の入場禁止、入場回数の制限、暴力団員の入場禁止、カジノ事業の免許者の交友調査実施など、日本人を規制する条件が課せられそうです。

賭博にはかなりの資金が必要で通常のパチンコ依存者がカジノに入り浸るのは簡単ではありません。道楽御曹司でなければ、勤務先や公的資産の横領、詐欺などの犯罪の引き金にもなりかねません。経済犯罪を監視するシステムが必要になりそうです。

ギャンブル依存症への一番の近道は実はパチンコです。その対策として韓国では06年からパチンコを禁止しました。韓国では日本と同じ1万5千軒もあったのですが、自殺や事件が増えて社会問題になり、政府高官絡みの汚職事件の発覚で禁止になりました。業界からの猛反対を押し切って禁止を実現した韓国は立派だと感心しました。

依存症だけでなく、日本のパチンコは北朝鮮の資金源にもなっており、貿易制限の一環にもなるはずです。