つらかった抗がん剤、有効だったセカンドオピニオン

黒い便、術前に抗がん剤

決断の勝利、ハッピーな今、飛翔中

倒れたのは6年前の5月25日朝6時半、経営する店に着いてまもなくでした。腹が痛く動悸が激しくなり立っていられなく、のた打ち回りながら家内に携帯で電話しました。すぐ救急車が来て病院に運ばれました。倒れる2ヵ月ほど前、定期健診で胃の再検査の通知が届いていたのですが、仕事の都合で再検査を1ヵ月後に延ばしていました。

その間、黒い便が出るようになってきたのですが、1ヵ月もすれば診てもらえるからと、先延ばししていました。それが冒頭の事態になってしまったのです。運ばれた病院では応急処置だけが行われ、手術は大きな病院でと、別の病院に回され、手術が終わった頃は夜になっていました。それも胃に穴が開いたのを閉じただけで、がんを取る手術ではありませんでした。

がんを取る手術は、その手術の傷が癒える3ヵ月後にし、がんを小さくするための抗がん剤治療を始めました。そのときの診断はステージⅢでした。それから1ヵ月がたった頃、家内が先生に「手術はやめて抗がん剤での治療を続けましょうか」といわれました。私は抗がん剤の治療では治らないのではと疑問を持ち、他の病院でのセカンドオピニオンを申請しました。

名古屋市にある愛知県がんセンターの伊藤誠二先生から「手術ができないことはない。早くしたほうが良い」といわれ、私はその場で転院を決断しました。

2010年8月9日、胃と胆のうを全部、膵臓も3分の1切除しました。ステージはⅠとⅡの中間ぐらいとのことでした。術後の経過は良く、術後1週間ほどで退院して良いといわれましたが、不安がありましたので、結局14日間入院しました。

1年間は2週間に1回病院に通い、栄養士からの指導どおりに食事をとり、規則正しい生活に努めました。体重は術前の64㎏から12㎏ほど減り、現在54㎏で順調に回復していきました。

執筆・出版にトライ

だ、それから1年間の抗がん剤ティーエスワンの副作用はかなりキツいものでした。食欲不振、気だるさ、下痢、嘔吐で、ひどいときは、自分の判断で服用を控えたこともありました。今は半年に1回と病院に通う回数も減り、6年目を迎えた現在、再発も転移もありません。

しかし、体重減少に伴い、重い荷物を持ち運ぶ力や持久力は弱くなりました。また、1度にたくさん食べることや早く食べることはできませんが、お酒は毎晩の楽しみの一つになっています。今はおかげさまでこの体調に慣れ、後遺症という言葉を忘れるくらいです。

退院してから1ヵ月ほどたって、生きる希望を持ちながらも、死を考える期間が長くありました。ラジオを聴いたり、テレビを観たり、本を読んだり、散歩に出かけたりと単調な生活は、病気になるまでの仕事漬けの生活とは隔世の感がありました。

そんな中、ふと「何か書いてみようか」と、本を出すことを思いつきました。とにもかくにも、おもしろおかしく書きたかったのです。単調な生活に何が何でもアクセントをつけたいという思いがありました。そうすることが私の生きている証明のような気がしたからです。

出版した『あなたもステキよ』の内容は、男の願望である(?)老齢者の恋物語です。63歳の初老の男と29歳の中国出身のホステスとのロマンスを通して「自由」のすばらしさを書きました。

私は再婚で子供も小さく、胃がんになった64歳のときは、長男が高校1年、次男は小学5年生でした。この子供たちを残しては絶対に死ねないとの強い思いがありました。70歳の今、長男は大学2年生、次男は高校1年生になり、生きている喜びを噛みしめています。

国際線採用のヒット商品開発

の父親は、戦争末期の1944年(昭和19年)、物資のないときに、みそ、しょうゆの販売を手掛けていましたが、長男である私があとを継ぎ、食品、酒以外に土産品などの開発もしました。そんな中で地元産のミカンを加工した『でこたんようかん』を開発、この商品が昨年12月から全日空国際線の機内食に採用されました。このハッピーなニュースは新聞に掲載され、県から表彰されました。2012年には食品のオリンピックといわれるモンドセレクションシルバーメダルを受賞しました。自社商品のPRでごめんなさい。

ほかにうれしかったのは、1971年、地元南伊勢町の町議会議員に25歳で当選、全国で一番若い町村会議員になったことです。3期連続当選した後、35歳で三重県議会議員に出馬しました(無念! 落選)。つらいこともうれしいこともある波乱万丈な人生の途中です。

仕事ができる喜び

さな自営業ですので、自ら働かなければ経営は成り立ちません。目標を持って働くことが体のために良いのかもしれません。新しい顧客開拓のプレゼンや、お客さまへの配達、営業など人と接することが生きる意欲につながっていると思います。

また、地元の商工会の役員を引き受けたり、自分の古希を記念して、地区の一人暮らしの方へのクリスマスケーキプレゼントなど、今までのご恩返しとして地域社会奉仕も始めました。このような活動ができるのも家内を始め8人の従業員のおかげと感謝しています。今年は伊勢志摩でサミットが開催されます。世界の平和はもちろん、がん撲滅対策についても『でこたんようかん』を片手に!話し合っていただきたいと思っています。

三重県度会郡南伊勢町宿浦1114の39
TEL:0599-69-3111
ウェブ:http://www.decotan.com