後期ダンピング症状は分割食で対応

術後、再びフルマラソンに挑戦

開腹で胃の3分の2を切除

後期ダンピング症状は分割食で対応

私は岡山市にあるゴム製品を製造する会社に勤務し、今年3月に定年を迎えましたが、引き続き同じ職場で働いています。仕事の内容は総務です。

平成22年3月、55歳のときに胃の幽門側3分の2とリンパ節、胆のうを切除し、ビルロートⅠ法で再建しました。兆候は、その前年末から年始にかけて胃もたれがありました。

元々、胃はあまり丈夫ではなく、12年前の43歳のときに胃潰瘍でピロリ菌の除菌治療を受けたことがあります。その再来かと思い、かかりつけの診療所で胃潰瘍の薬を処方してもらいましたが、胃もたれの症状は変わりませんでした。少し強い薬に変えてもらいましたが同じでした。そこで医師から内視鏡検査を勧められ、採取された組織の中から癌細胞が発見されました。

紹介された病院で再度検査をを受け、胃潰瘍の広がりが4.5×2.7㎝と大きかったため、開腹手術になりました。広がりに対して浸潤は浅かったため、進行度は早期のⅠAと判定されました。2週間の入院後、自宅療養は2週間でした。

経過は順調で、入院して約1ヵ月後に職場に復帰しました。

後期ダンピングには分割食

術後は下痢気味で、食事に脂っこい物は避けていましたが、3ヵ月経過した頃、休日の朝にたまたまベーコンエッグを食べたところ、30分後に全身脱力と冷や汗に襲われ、横になってじっと1時間耐えました。さらにその後、30分に及ぶ下痢が続きました。以来、朝食には絶対に脂っこい物は食べません。代わりに起床後にヨーグルト、妻の勧めで毎食後に強力わかもと、そして就寝前にホエイプロテイン(乳清たん白)を飲むようにしました。

おかげで下痢はかなり減りましたが、それでも多いときには1日5?6回トイレに行きます。その後、下痢はなくなりましたが、トイレの回数はあまり変わっていません。

1回の食事の量を減らすことで、食後すぐに起こる早期ダンピング症状は防ぐことができるようになりましたが、1時間半から2時間後に起こる全身脱力と動悸や冷や汗の後期ダンピング症状に悩まされました。低血糖を防ぐために、会社にあんパンやゼリー菓子を持参して、食後に食べるようにしましたが、うまくいきませんでした。市販の固形のブドウ糖も同じでした。思い返すと、元々、ご飯(白米)が好きな体質に菓子類は合いにくく、体調が安定しなかったのだと思います。

術後2年が経過した頃から、毎食のご飯の量を茶わん3分の1に減らして、おかずを中心に食べるようにしました。

会社の昼食は業者の配達弁当ですが、ご飯は3分の1だけ食べ、残りはおにぎりにして、2時頃に食べました。それから5時までの間にあんパンを食べ、これでずいぶん体調が安定して、脱力や動悸はあまり起きなくなりました。分割して食べるようになってから後期ダンピング症状はほとんどなくなり、うれしく思っています。

免疫力の低下に驚く

順序が逆になりますが、手術1年後に術前に週1回通っていた市民プールでのスイミングを再開しました。

あるとき、自由コースを無理なく1時間ほど泳いだのですが、2日後にのどに痛みが出て、近くの耳鼻咽喉科を訪ねたところ、すぐ病院への紹介状を出してくれました。胃を手術した同じ病院の耳鼻咽喉科へ1週間入院することになり、「右扁桃周囲膿瘍」と診断されました。幸い点滴薬で腫れが引いて、切除は免れましたが、自分の身体の免疫力が少なくなっていることに改めて驚きました。

筋力維持のために

手術前は週末にジョギングをしていました。並の速度ですが、フルマラソンも何度か走りました。手術した平成22年は無理でしたが、翌23年に9回目になる大会に参加しました。タイムは4時間34分16秒でした。手術の前年21年11月にも参加していて、そのときのタイムが4時間30分35秒でしたので、筋力はある程度戻すことができるのかと思いました。

また手術から2年後の平成24年から、「第九」演奏会の合唱団に入り、毎年12月に市内のシンフォニーホールで開催される演奏会に参加しています。私はテノール・パートに所属していますが、有名な指揮者の方に指導を受けることができるのが、とても有意義で、いつも新鮮な気持ちになっています。

今年4月1日は"卒業式"?

手術後、1年おきの経過観察のために通院して、今年27年4月1日が5回目でした。血液検査とCT検査の後、担当医師の診断があり、胃癌治療は5年たち、「卒業です」と告げられました。執刀いただいた担当医師に、命を救っていただいたお礼を申しあげました。大げさですが、5年間生かしていただいて本当にありがたく思います。

担当医師からは、今回卒業できたのは早期発見のおかげで、日本男性の平均寿命80歳のなかで、今後、他の癌に侵される可能性は大きいので、そうなったときに早期発見できるように定期検診を受診するように勧められました。

身長は171㎝ですが体重は手術前の63㎏から、今は59?60㎏で推移しています。今年3月の定年後、4月から継続雇用となり、今までと同じ週40時間勤務をしています。

4つの消化器癌と闘われたという、石川房利様の体験記(会報・平成23年1月号)を拝読し、自分の体験の軽微さに恐縮しています。そして、ずいぶんと勇気をいただきました。ありがとうございました。