あまりの副作用に抗癌剤を中止

サプリメントと趣味で生き抜く

電話での告知

6年前の平成17年12月にルーワイ法の再建で胃全摘手術を受けました。

あまりの副作用に抗癌剤を中止

癌は進行性で、一部が胃の壁の第4層(漿膜下層)を突き抜け、5層(漿膜)にまで達していました。手術の1年ほど前から腰回り、太もも、背中に経験したことのない原因不明の激しいかゆみが発生していました。それまでは大きな病気などしたことがなく、なにか不気味でした。

このかゆみで、就寝中によく起こされました。皮膚科ではスギ花粉症との診断でしたが、1ヵ月ほどおきに発症を繰り返していました。胃癌手術後はこのかゆみがウソのようになくなり、癌との関係があったのではと思っています。

私は62歳までIT関係の会社に勤務していました。仕事はシステム構築のプロジェクトマネジャーでした。会社の健康診断で要検査と指摘され、胃の内視鏡検査を受けたところ、自宅に病院から電話が入り、悪性の胃癌で早急に病院へ来るようにといわれました。テレビや雑誌などで、癌の告知とは診察室で医師から厳かにいい渡されるものと思っていただけに、驚きつつも、癌とは一般的な病気になったものだと、妙に感心したりもしました。

同時に胃の痛みなどの症状がほとんどないことから、大変なことになったと思いつつも、あまり深刻には考えていませんでした。しかし、手術後の状況は、とても一般的とはいえるものではありませんでした。

抗癌剤の副作用で白血球数が激減

手術後、抗癌剤ティーエスワンの服用を始めました。服用期間中はひどい食欲不振になり、緩和薬も併用しましたが効果は認められず、ご飯などの食べ物のにおいによる吐き気、倦怠感などで、苦しい日々が続きました。

妻からは「まるでつわりのようね」といわれました。副作用は人により異なるといいますが、私は薬がよく効いているから副作用も強いのだと考えるようにしていました。しかし、白血球数が減り続け、6ヵ月目には1600(基準値3500∼9700個/μl)にまで下がって、ついにティーエスワンはドクターストップとなりました。

後遺症対策は体力強化で

ティーエスワン中断前後より、転移や後遺症を考慮してサプリメントや健康食品をとり始めました。アガリクス、プロポリス、霊芝など十数種類の健康食品を試しました。また、食後のダンピング症候群対策として、炭水化物や脂質がゆっくり吸収され、血糖値上昇が穏やかになる賢者の食卓(大塚製薬)やイージーファイバー(小林製薬)などの繊維質飲料をとりました。

これらの私への効き目はよくわかりませんが、倦怠感や食後のダンピング症状は徐々に軽減されたように思えます。しかし、毎日の闘病体験からいえることは、自分自身の免疫力・体力の強化が重要で、そのためには、食後は何時間もごろごろせずに軽い運動や趣味などに取り組み、精神的にも充実した生活を送ることが最も効果があると考えています。

ビタミンB12の低下と胆石発生

術後1年が過ぎた頃から左右の足先にシビレや麻痺が発生し、原因が判明しないまま、しびれは足の甲にまで広がっていきました。血液検査で鉄分値などを調べましたが、特に大きな問題はみられませんでした。同病院の整形外科では背骨が影響しているらしいとの見解がありました。神経内科では、MRIによる背骨の精密検査、筋電試験、下肢の動脈硬化検査などの結果、ビタミン不足が疑わしいといわれました。

事実、ビタミンB12の値が約60(基準値180∼914pg/ml)に減少していたため、注射で補充しました。ビタミンB12は錠剤を服用していましが、私の場合は注射の併用が必須と思いました。原因確定まで約半年かかったのは、私の医師への症状伝達が曖昧だったためと考えています。すなわち、現在の症状だけではなく、発生時期や変化を含めた情報をどう伝えるかで診断は大きく変わってくる場合もあると思えます。

原因判明までの苦しみは患者に降りかかって来るので、的確な診断につながるように日頃から症状などを記録することが、とても大切だと痛感しました。手術後3年目には胆汁滞(胆泥状態)から胆石ができ、開腹手術で胆のうを摘出しました。胃の手術でリンパ節郭清を行ったため、いつかは胆のう機能が衰えるのではと覚悟はしていました。胃癌手術前や手術中の検査で、リンパ節への転移の有無がその場で判定できればリンパ節郭清をせず、胆のうも残せたと考えると残念でなりません。

ビタミン抗癌剤の副作用で涙道閉鎖になる

手術後数年して、涙がたまり、いつも涙が溢れる症状が出始めました。病名は涙道閉塞ですが、当初は加齢のためと思っていました。しかし、かかりつけの眼科医の紹介で受診した総合病院の眼科で、ティーエスワンの副作用ですねといわれ、なぜ今頃に、と驚きました。

眼科医の話では、最近ティーエスワンの副作用で来院する患者が多いとのことでした。抗癌剤治療は、副作用に対してどこまで身体が許容するかの闘いです。その影響の多様さに驚きつつ眼に発生した副作用の治療を続けていますが、なかなか完治しないのが悩みの種です。

病気が人生を楽しむキッカケに

手術前は仕事で深夜帰宅や出張が多く、余暇を楽しむ機会が少なく、また、その気にならない日が続いていました。術後は、余命もあまりないのではと思い、好きなことを実現しようと、オートキャンプなどのアウトドア、家庭菜園、ボランティア活動などで充実した日々を送るようになりました。抗癌剤の後遺症や早食いに伴うダンピング症状などはあるものの、病気が人生を楽しむキッカケを与えてくれたと感謝しております。

また、以前から全国百観音札所巡りをしています。西国33札所(関西)、坂東33札所(関東)、秩父34札所で、合計100札所となります。暇を見つけて巡っており、66札所を巡ったところです。満願達成までにはまだ何年もかかりそうですが、ある札所でいただいた言葉を噛みしめ、今後も歩んで行こうと思っています。

生かされて 今日の喜び 感謝の心